スターリング・ノース著・亀山竜樹訳
出版社 ブッキング
発売日 2004.11
価格 ¥ 1,575(¥ 1,500)
ISBN 4835441397
いわずと知れた名作アニメ「あらいぐまラスカル」の原作本。
出版社がブッキング、ということは復刻版ですな。
確かに巻末に
本書は1994年小学館より発行された「はるかなるわがラスカル」を底本に復刊されました。
とある。
ふむん。
アニメでは自由な家風の元、家政婦の攻撃も飄々とかわしながら、病気がちの母親を気遣いながら、ニコニコと動物をたくさん飼う、いいところのお坊ちゃんといった風情のスターリング少年。
実在のスターリング少年が、大きくなってから子どもの頃を懐かしんで書いたのがこの本だというのは知っていたが。
初期設定としては家政婦はまだ存在しておらず。
母親は既に亡くなって、何の職業かよく判らないままになんとなくリッチで浮世離れしている父親。
遠方に住む姉2人。
へぇ。お兄さんもいたんだね。しかも戦時中だったんだ。フランスに出兵中。
アニメではあまりにも子ども達がみんな幸せそうで、気づかなかったが、この原作本でも戦時中といった悲壮な雰囲気は全くない。
母親を失ったラスカルを可哀相に思って飼うことに決めたアニメの経緯とは違って、もっと少年らしい好奇心でアライグマの巣から一匹の子アライグマを捕まえる。
家庭菜園や新聞・雑誌売りで小遣いを蓄えては趣味のカヌー作りの材料につぎ込んでいるその様子は、いかにも少年らしくてほほえましい。
うちの小僧達もこんな風になるのかな。
親友の母親が示してくれる優しい態度に、なくなった母を思い出してそっぽを向いてみたり、小言を言いながらもパリッとした格好を弟にさせようと流行の洋服を着せようとする姉にちょっと反発してみたり。
浮世離れした淡々とした気性の父親とはいい友だちといった感じでマイペースな関係を築いているが、スターリング少年が父親像をそう捉える一方で父親の方は、檻の中にラスカルを入れなくてはいけないスターリングの気持ちを気遣って自分の仕事にかこつけてキャンプを提案したり、さりげなく父親らしい気遣いを見せる。
気になるのは、小説の終わりの方で明らかにされる事実。ラスカルと分かれて3年後に車椅子の生活になってしまうスターリング少年。実際の出来事はストーリィの終わったあとのことらしく、詳細は書かれていない。彼がこの自伝的小説を書くことになるまでの、彼の生き様とか色々読んでみたくなる。
そのことは抜きにしても、年頃の少年の好奇心の塊とかまっすぐな気性とか、感受性の高さとか。とても気持ちよく読めた1冊だ。
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