ジェイムズ・L.ハルペリン〔著〕・内田昌之訳
出版社 角川書店
発売日 2002.07
価格 ¥ 1,000(¥ 952)
ISBN 4042788025
昔あったコールドスリープ?がテーマのSF。
コールドスリープ…作品中ではクライオニクスによって主人公は「人が死ななくなる時代」まで眠り続けることになる。
初期に冷凍された人たちの周りで起こる遺産相続問題。
目覚めるまでの時代の変化。
クローニング技術とAI技術の進化により、殆ど半自動化されて幸福な世界が待っている。
あまりにも楽観的な未来。食糧事情はバイオテクノロジーその他によって解決されたかのように書いてあるけど、土地や住の問題はどうなのかな?資源開発は?増えすぎる人口問題はどう解決する?流し読みの部分にもっとその辺の記述があったのかしらん。
主人公は幸福な社会に復活して、同じく凍眠していた自らの母や子どもたち、親友を次々と冬眠からよみがえらせる。復活させるべき身体が失われていた妻にいたってはクローニング技術によって同一の遺伝子を持つ子を作り出し、そこに自分の記憶を少しずつ注入することによって妻の生き写しを再度得るまでに到る。
でもどうなんだろう。この小説の中の世界では、新しき未来ではついに新しい生命とは出会えなかった。息子が凍眠から覚めたのちに出会い、結婚することになった女性は、父親の古い友人の曾孫娘だった。
父親の生きてきた生のある証。
そういう意味では、ストーリィとして成り立っている。
しかし、新しい命が生まれることなく、自分の母親の記憶、父親の記憶、大事な古い友人たちに囲まれた世界。
失われた古い絆を復活させるのみの世界というのは、ある意味未来のない話ではないだろうか。
…あとがきによると、クライオニクスって実在の機関があるのね。つーことはこりゃ、クライオニクス布教の小説かぃ!
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