スー・シェパード著・赤根洋子訳
出版社 文芸春秋
発売日 2001.11
価格 ¥ 840(¥ 800)
ISBN 4167651157
ありとあらゆる意味での保存食。食品を保存するための材料。
塩、乾燥、酢、燻製、発酵、砂糖、濃縮。
乳製品と携帯の目的を含むパイや壺や瓶詰め。缶詰。
船による旅行の際の糧食、戦争や宇宙での食事。
冷蔵庫と冷凍庫の普及。フリーズドライなどの脱水による食品の保存やレトルトパウチ。
特に前半には初期の世界中の食品保存法ということで、地域的条件などを加味した考察もまとめられており、非常に面白かった。
岩塩がたくさんは取れない地方では、塩漬けという方法は最低限しか行われないこと。木材があまり取れない地方では燻製はできない。多湿な地方では食品が傷みやすい。
イギリスはそういう意味では食品加工がしづらく、果物の保存にドライフルーツではなくジャムが発達したり。
ソースや調味料、香辛料といった部類も加工食品を作る過程で発達した。世界史を垣間見る面白さである。
「大草原の小さな家」のような古きよき時代のお話を読んで、家庭で色々な料理を食べるシーンを見るのは楽しい。ブタを殺してハムを作る、膀胱でボールを作ってもらったり、尻尾を串に刺して焼くシーン。
「赤毛のアン」ではさまざまなケーキやパイを焼くシーンが出てくる。アンが疲れて帰ってきた日に、鶏をつぶして焼き鶏を作るシーンもある。(当時は鶏は特別な客のあったときなどにしかつぶさなかった)
そういう場面を読んで、おいしそう、と思いはするが現在では一般家庭でそういう食生活をおくる事は事実上不可能でありとんでもない贅沢だと感じる。
その一方で、保存食といいつつも世界中の食材を、近隣のスーパーで求めることができたり、新鮮な生肉や魚が毎日のように食卓に上る生活。
保存食を作るために毎日一日中働いて台所の中で今日はジャムを作り、明日は鳥をさばき…と家庭の中で余暇が取りにくい生活。
最近は狂牛病だの鳥インフルエンザだので「得体の知れない不安の残る食材」も増えてることは確かだが、どちらが好ましい食生活かと訊かれると困るよね。
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