森博嗣著
出版社 講談社
発売日 1997.01
価格 ¥ 924(¥ 880)
ISBN 4061819410
S&M4作目。
今回は話の中盤のかなりの部分は、犀川先生は出張中で不在。その分西之園の暴走を止めるものはいない(^_^;)
「そんなの、ルール違反だわミステリィでは」
という台詞があるが、こういう形で推理の材料を示し、犯罪が行われた場所を大学構内、しかも工学部の研究室と限定することで 決してありえない、むしろ当たり前に起こりえる状況だと示すことは、ミステリィの理にかなっている。
実際、テレビの実在の事件報道を見ながら
「何でそんなアタマ悪い犯罪するかな〜この〜!」
とツッコミを入れることは珍しくない。多少なりとも専門知識がある分野での事件ならなおさらだ。
そういう意味では、無人のキャッシュディスペンサーをショベルカーなどの工事作業車でドカンと壊してさっさと持ち去ったあの手口。一番最初は度肝を抜かれて本当に感心した。
従来の「如何に無人警報機をやり過ごすか」という手法で行われてきた窃盗事件とはレベルが違う。警報機が作動しても警備員が到着する前に逃走すればいいのだ。なんて明快。チカラワザブラボー!<おぃ!
閑話休題。
しかも死体の着衣が持ち去られていたこと、サイン、そういった個々の物的証拠には、ミステリィの中では必ず意味がある。殺人者の意図がある。そう繰り返し明示されており、その通りのストーリーを実現している点において、完成されたミステリィであると感じる。
難をいえばアレかな。理系っぽい?冷徹な論理構成のストーリィのはずなんだけど、今回はロック歌手だのちょっと毛色の違うキャラクターが出てきているせいか、或いは西之園嬢の学生としての生活臭が出てきているせいか。
今までとは少し雰囲気が変わってきた。
そういや、西之園嬢が両親のことを クラスで「わざわざ」内緒にしている、理由がわからない。
特に自慢するほどのことでもないと思うが。
知っているヒトは知っている、特に言う必要もないから知らないヒトは知らない。という程度のネタじゃないかと思うが。
まぁ実際には、親が学長をやっていた大学にあえて入学していれば、本人が言わなくともなんとなく噂になっていて、いつの間にか クラス全員が知っているという状況になりそうなもんだ。
Comments